パートナーシップにおいて、お互い好きで一緒にいたはずなのに、気づいたら上下関係ができてしまうことがある。

相手を尊重する気持ちは大切だが、相手の小さな要望を叶えるうちに、初めは「まぁいっか」と小さな我慢や譲る気持ちから、大きなストレスやトラブルに繋がる事も少なくない。

若い頃に、短い時間であるが一緒に過ごしていた異性がいる。

彼は食べ物、人とその言動、身につけるものなどの好き嫌いがはっきりしており、当時の私は自我が曖昧で、そのような姿に憧れと尊敬を持っていた。

しかし彼は、私のSNSの内容や服装、交友関係に口出しをするようになった。

始めは些細な事なので「私にも至らないことがあったかもしれないから気をつけよう」と受け入れていたが、口出しの内容はエスカレートし、徐々に当初の憧れや一緒に過ごせる嬉しさよりも、息苦しさを感じるようになった。

幸い距離を置くことができたが、価値観の押し付けや体型の否定をされ、私は疲弊し自分らしさを失っていた。

これだけを客観的に見ると、何で一緒にいるんだと誰しもが思うだろうが、こういったことはグラデーションで起きるということを身を持って実感した。

疲弊すると思考力が落ちる。

言い返すのも面倒くさいし結局嫌なことを言われ返すし、「どうせ言っても変わらない」という諦めのようなものがある。

後に「学習的無力感」とちゃんと名前があることを知った。

パワハラ・モラハラ下に置かれた状況も、きっとこのようなものなのだろう。

「直接的な暴力を振るわれたわけではないから、距離を置くのは自分のわがままではないのか」という罪悪感にも苛まれた。

しかしそのまま一緒にいればDVに発展していた可能性は否定できない。

DVは殴る蹴るだけではなく暴言や無視、生活費を渡さない・外で働かせない等の経済的な内容も含まれることを当時の自分に教えたい。

情報は人を救う。

交友関係に口出しをしたり、外部との関係を断たせようとするパートナーシップには注意が必要だ。

恋愛に限らず、目の前の人間関係でいっぱいいっぱいになると他のコミュニティと疎遠になりがちだが、自分らしくいられるコミュニティはいくらでもあるに越したことはない。

私は友人に話を聞いてもらったことで、かろうじて自分を保っていられたのだと思う。

自分の大切な人と場所は、絶対に手放してはならない。

パートナーシップがうまくいかない時の一つの提案として、サードプレイスを挙げたい。

サードプレイスとは、家庭(ファーストプレイス)とも職場・学校(セカンドプレイス)とも違うコミュニティである。

日常の大部分を共に過ごす家族や職場・学校の人に、悩み事の相談ができるに越したことはないが、そうではない場合も往々にしてあるだろう。

そんな時に、どこにもとらわれず客観的に話ができるコミュニティはとても重要だ。

サードプレイスの定義として以下の8つがある。

  1. 中立領域
  2. 平等主義
  3. 会話が主たる活動
  4. アクセスのしやすさと居心地
  5. 常連の存在
  6. 地味で控えめな空間
  7. 遊び心ある雰囲気
  8. 我が家のような場所

実際に全てを満たさなくても、例えばオンラインのコミュニティやゲームなどでも十分だと私は思う。

ほんの数分間でも、足を運んだり直接の会話をしなくとも、安心して自分らしく過ごすことができ、支配的ではなく対等な人間関係を築ける場所はきっと支えになる。

悩んでいる女性がどうか自分らしく生きられますように。

DV相談プラス
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些細なことでも悩んだらお近くの自治体の窓口へ(「お住まいの地域 DV」 などで検索してみてください!)

文 / 牧野くみ
写真 / 松永奈々