今回は、災害時に女性が直面する問題についてをテーマとして取り上げました。

静岡県出身の私は、小さい頃から東海大地震が静岡県直下で発生して被災する可能性について教えられ続け(今は南海トラフ地震の危険性の方が強く言われていますが)、学校などで防災について考える機会が多く与えられていました。

東日本大震災発生時に大きな揺れに遭った時も、真っ先に東海大地震が来たのかと疑いましたが、遠く離れた東北が震源と知り、その被害と影響の甚大さに唖然としたものです。

こうした災害や防災に関する関心はあるものの、私自身は被災当事者や災害支援関係者ではありません。
ですが、福祉関連の業界で働いていて被災地支援をしている方々と話す機会が多いため、本コラムでは過去に被災地支援関係者から聞いたことをふまえながら、自分なりに調べたことをまとめています。

災害時、特に女性特有の課題として挙げられるのは生理に関すること。

令和5年の調査によると、生理用ナプキンの備蓄がある自治体は、約8割にも上るそうです。
https://www.gender.go.jp/policy/saigai/fukkou/pdf/chousa/r4_zentaigauyou.pdf

しかしながら、緊急時に十分な枚数が手元に回ってくる保証はありません。

また、避難所の運営や支援者には男性が多く、必要な枚数の理解が得られにくいことも一つの問題になります。 過去には、1日に1枚しか配られなかったという例もあるそうです。

SNS上では、一部の男性から「ティッシュや布で代用すれば良いのでは?」という意見が挙がっていたほど。女性側からすると、思っている以上に理解を得る事が難しい問題なのかもしれません。

万が一の時にこのような困りごとを避けるため、日頃から多めに生理用品をストックしておくことをお勧めします。

2、3枚程度を防災リュックに詰めておくだけでなく、避難生活が長期に及ぶ可能性も考え、できればご自身の生理の一周期分を備えておくと懸命かもしれません。

一周期分となると、おおよそどれくらいの枚数が必要になるのか、以下を参考にご自身の必要な量と照らし合わせて計算しておくのも良いと思います。

https://x.com/fukuchi_mami/status/1891319407562936370?s=46
(フクチ・マミ氏のXより引用。
共著「こどものせいきょういくはじめます」にて、ユニ・チャームさんと協力で算出したという「目安の数」だそうです。必要な枚数は個人差が大きいため、この目安量を算出するためにとても苦労されたそう。)

著書はこちら↓
https://www.amazon.co.jp/こどもせいきょういくはじめます-おうち性教育はじめますシリーズ-フクチ-マミ/dp/4046841214/ref=rvi_d_sccl_1/356-8827444-7777417?pd_rd_w=GzoFx

また、生理期に限らずとも、トイレに関する衛生問題は女性にとって大きなリスクとなり得ます。

被災時、自宅が倒壊せずに済んだとしても、断水が起きるとたちまちトイレが使えなくなります。 避難所の仮設トイレを利用する場合、1時間以上待ちの長蛇の列になることもあるのだそうです。 水洗トイレと比べると衛生管理が難しく、感染症リスクも高まります。

そうした時のことを考えると、ご家庭で使える簡易トイレ用凝固剤を備えておいたり、ビニール袋や新聞紙を用いる簡易トイレの作り方を調べておくと、被害が少ない時は助けになるかもしれません。

https://www3.nhk.or.jp/news/special/saigai/basic-knowledge/20240103_01.html

また、ナプキンだけでなくおりものシートや使い捨てショーツを備えておくと、充分に洗濯ができない状況下でも下着を比較的清潔に保つことができるのでお勧めです。

もう一つ、被災地での防犯についても考えておきたいです。

残念なことに、災害時は女性を狙った犯罪も発生しやすい傾向にあります。 この時、犯罪を起こす可能性があるのは同じ地域の男性被災者だけとは限りません。

被災地には犯罪目的の外部の人間も容易に入ることができるそうで、避難所も例外ではありません。
避難所に町内会の方などが見張りとして駐在し、見かけない人が入ってきた時に声をかけてくれる場合もあるそうですが、そうでない限りまず見分けることはほぼ不可能だそうです。

能登の支援に入った同業の上司も、「噂には聞いていたがこれほど多いのか…」と驚いたくらい、被災地に不審人物が出入りしていたと話していました。
高齢者が避難所に持ち込んだ金品を狙うことが多いそうですが、暗い時間帯に仮設トイレ内で男性が待ち伏せている例もあったそうで、皆が混乱し疲弊している避難所では防ぎきれないのが現状です。

対策としては、やはりなるべく女性1人で行動しないことが1番だと思います。
また、防災リュックの中に防犯ブザーやホイッスルも備えておき、トイレに行く時は常に携帯しておきいざという時に鳴らせるようにしておくのも、一つの手かもしれません。

万が一そうした被害を受けた時は、
警察庁の性犯罪被害相談電話全国共通番号「#8103(ハートさん)」をはじめ、各自治体の相談窓口が利用できます。
https://www.npa.go.jp/higaisya/seihanzai/seihanzai.html#kantou

他にも、災害時の女性に関する課題について調べていくと、避難所でプライバシーを守ることの難しさや、炊き出しなどの無償業務の負担が女性に偏りやすいこと、ストレス環境下で配偶者からの暴力が増加しやすいこと…などなど、数多くの課題が挙げられていました。

こうした様々な課題は安易に解決策が見つかるものではありませんが、過去の災害支援における反省を今後へと生かすための取り組みも数多くなされています。

東日本大震災時は「東日本大震災時女性支援ネットワーク」が立ち上げられ、様々な調査がなされています。
また、内閣府では過去に「男女共同参画の視点からの防災・復興の取組に関する検討会」が行われています。
その中では、被災地の防災委員が男性中心になりやすく、女性側の観点が見落とされやすいため、地域防災に女性が参加していくことの必要性について述べられていました。

これらの調査や検討会をもとに、令和2年5月には内閣府より「災害対応力を強化する女性の視点」という自治体向けの防災・復興ガイドラインが刊行されています。

こちらは公的機関向けのガイドですが、巻末の備品リストは女性個人にとっても参考になりそうです。
https://www.gender.go.jp/policy/saigai/fukkou/pdf/guidelene_01.pdf

また、女性向けのわかりやすい防災ガイドブックを作成している自治体もあります。

東京都 東京くらし防災
https://www.metro.tokyo.lg.jp/tosei/hodohappyo/press/2018/02/16/07.html

神奈川県川崎市 ひとり暮らしの女性のための防災BOOK
https://www.scrum21.or.jp/issue/bousai_book

大分県 女性の視点からの防災パンフレット
https://www.pref.oita.jp/uploaded/attachment/2066609.pdf

これらと併せて、ご自身の自治体の防災マップやガイドブックについて調べておき、ご自宅から近い避難所などを把握しておくと良いでしょう。

大切なのは、平時からこうした防災のための情報に触れておくこと。

もしもの事が起きてからは、どうすれば良いかをゆっくり調べる猶予がありません。
ネットが使えなくなり、情報を得られなくなる可能性も高いです。

何より、「前もって用意しておけばよかった…」と後悔する事がないよう、日頃から入念に備えておくことが1番です。

どうか、被災によって心とからだを壊される方が1人でも減りますように。

文 / moge
写真 / 松永奈々