北方民族博物館に行きたいし、流氷を見に行こう!ということで、一路網走へ行った記録の最終回です。
旅程
1日目:女満別空港〜北方民族博物館〜天都山〜オホーツク流氷館〜道の駅 流氷街道網走〜網走市立郷土博物館分館 モヨロ貝塚館〜珈琲屋 デリカップ
2日目:網走監獄〜JR北浜駅〜濤沸湖〜流氷船おーろら〜女満別空港
北浜から再び、乗船所のある道の駅 流氷街道網走に戻ってきた。
この日、流氷観光砕氷船”おーろら”は第1便から4便まで欠航していた。
しかし、間違いないようだ。最終便となる第5便は運行する、と入口のスケジュールにも貼り出されている!
船が出るまで
乗船券を無事入手してから、道の駅のテイクアウトコーナーで、網走ザンギ饅頭と網走産長芋フライを注文。
網走ザンギ饅頭は、オホーツク海産のカラフトマスの唐揚げがパオにサンドされている。
長芋はとても好きなので、かなり素敵な組み合わせでとても美味しかった。
そうこうしているうちに、いつのまにか船に乗る人たちが並びはじめている。
良い席を取られてしまうんでは!と内心焦りながら、列に加わっておく。
サハリンから北風に乗って
ところで、毎年1月に網走や紋別など、北海道のオホーツク海側の沿岸に押し寄せてくる流氷はどこからやって来るのか。
以前は、凍ったアムール川の氷がオホーツク海に流れ、それが北海道までやってくるのではないか、という説があったそう。
しかし1993年から94年にかけて、北海道立オホーツク流氷科学センター 元所長の青田昌秋氏が、発信機付きのブイを使って調査を行ったところ、サハリン北東部の海が凍って南下し、それが北海道まで流れてくることが分かり。
その後の調査では人工衛星による観測が行われ、オホーツク海北部の海岸で次々と発生する海上の薄い氷が、シベリアからの冷たい北風によって南に流されてくることが分かっているようです。
特別客室にて
いざ、乗船すると。
2階前方に「特別客室」なる指定席があるそうで。
料金は座ってから出航後に集金、とのことで、眺めが良さそうで且つデッキにも出やすい席に座ってみた。
この日は、流氷が来ている辺りまで大体30分くらいかかるらしい。
船内の売店で暖かいコーヒーも買っておく。
出航前からデッキの最先端に出ているヤングな強者たちもいた。
とても楽しそうであるがとても寒そうなので、少しずつ離れていく街並みを眺めながら、コーヒーをいただくとした。
流氷はいつか、来ないかもしれない
日本で最初に本格的な流氷観測がはじまったのは、1892年。
網走測候所(現在の網走地方気象台)が現在まで観測を続けているそうで、これは世界で一番長い流氷の連続観測なのだとか。
こうした観測の結果などから、地球の温暖化による様々な変化が分かっていて。
まず、網走では年平均気温が100年あたり約1.3℃の割合で上昇。
オホーツク海では10年当たり平年値の5.3%の割合で海氷域が減少している。
北海道沿岸では1980年代後半以降、流氷※量の減少が著しい。
北海道沿岸で流氷が観測される頻度が最も高い網走では、1989年以降の流氷量の減少が著しく、また、流氷終日が次第に早まっており、流氷初日も次第に遅くなる傾向が現れている。
※流氷:海氷のうち、海を流れ漂い、海岸に定着していないもの。
引用:文部科学省及び気象庁「日本の気候変動2020-大気と陸・海洋に関する観測・予測評価報告書-」
流氷観光砕氷船おーろらのウェブサイトでも「流氷の見頃はいつですか?」という質問に対して、「地球温暖化の影響により、年々流氷の接岸の遅れや面積が減少傾向にあるため、 過去のデータが参考にならなくなってきております。」との回答が掲載されている。
海上に積もった雪のような
そろそろ、流氷が見えるエリアに到着するか、という頃。
出航前からすでにデッキにいる強者たちは未だその最前列をキープしている。
少しずつ人々が外に出始めるので一度一旦外に出てみる。
当然だけど街中より一段と風が冷たく、当然だけど風も強い。
いよいよ、館内放送もあって、流氷が見えてきた!
船のすぐ下に、氷の固まりが広がっていて、船は氷を砕きながら進んでいる。
一斉に人々は席を立ち。
デッキには冷たい風に煽られながらも、流氷を間近で見ようとたくさんの人が出てきている。
船内も窓際に多くの人が並んで、写真や動画を撮ったり。
見渡すと、海の上なのに雪原が広がっているようで、水平線のすぐ下に地平線があるよう。
船が折り返し出すと、ちょうど空が少しずつ赤く染まってきた。
少しずつ人々も船内に戻っていく。
いろいろな形をした、何色とも呼べないいろいろな青と白が、漂っていた。
流氷がこない海
(2)のオホーツク流氷館で、クリオネが流氷にくっついて北海道にやってくると知ったけど、流氷にくっついてくるのはクリオネだけではなかった。
流氷の下には「アイスアルジー」と呼ばれる微細藻類が棲みついている。
アイスアルジーは、春に向かって流氷がとける過程でさらに増殖して、海水中に放出され。
それを動物プランクトンが食べ、魚が食べ・・・という食物連鎖に繋がっているそう。
流氷がこなくなると、こうした流氷の恵みがなくなってしまうが、それだけではない。
流氷の量が減り、海面が塞がる期間が短くなることで、アザラシの行動半径が広がって漁業に影響が出たり。
まとまった流氷が接岸することで削り取られる雑海藻が生い茂って、新たなコンブが着床できずコンブ漁が不漁になったり。
流氷を観る、という楽しみやそのための旅も、できなくなってしまう。
流氷を守るには
流氷科学センターのウェブサイトに、このようなメッセージが書かれていたので最後にご紹介したいと思います。
Q10.流氷を守るために必要なことは?
無駄な電気、歩ける範囲なのにすぐ車、夏の冷やし過ぎた部屋、冬の暑い過ぎる部屋、・・・。自分自身の日々の暮らしの中に反省する点がたくさんあります。
また、地球の反対側の海の魚、牧場の肉を食べることは、それを運ぶ船、飛行機の油も食べていることになります。地産池消(できるだけ地元で生産されたものを消費しようという運動)が大切だと思います。食べ物の場合は、新鮮で安全で安く、油の浪費も少ないので地球環境保全にも役立ちますね。
私たち人類は、あまりにも物質的豊かさを追い求め、心まですり減らしながら、生きてきました。その努力の結果が地球温暖化を引き起こしたといえるでしょう。
地球も人のこころも病んでいます。流氷の海を眺めながら、人間のほんとうの豊かさとは何かを考えたいと思います。自らの反省を込めて。
引用:北海道立オホーツク流氷科学センター