第3回目は、深海合唱団のみさが、MSC(Marine Stewardship Council:海洋管理協議会)高橋麻美さんにインタビュー。後編では、高橋さんの海をめぐる活動を中心にお話を伺いました。
前編 MSC「海のエコラベル」はこちら

高橋麻美

高橋麻美さん
プロフィール
Asami Takahashi

MSCジャパン、漁業担当マネージャー。MSC漁業認証の普及に努める。水産業と生き物豊富な海の両方を将来に残すことを目指して活動している。
https://www.msc.org/jp

みさ
Misa

3つの海

みさダイビングや磯遊びがお好きとのことですが、忘れられない海や思い出の海があったら教えてください。

高橋基本どこの海も好きですが、沖縄は透明感のあるサンゴ礁の海で、神奈川や千葉は大型の海藻が繁っていて、沖縄では見られない生き物がいたりして、それぞれの違いを楽しんでいます。
そういう多様性も含めて好きなので選ぶのは相当難しいけど印象的なのを3つ挙げるとすれば、一つ目は硫黄鳥島という無人島です。

みさうわー、すごい!

高橋大学・院時代と研究のために行っていました。断崖絶壁で上陸できるとこはちょっとしかないんです。そのちょっとだけ下の方にある砂利のところで野宿しながら調査をしていました。

高橋周りに大きな島もなく、人が立ち入らないせいか、透明度が半端なくて、海の中も手つかずな感じがすごい。30mくらい先も余裕で見えて、岩肌が見えないくらい全体をサンゴが覆っているワイルドな感じが印象的だったのでよく覚えています。

高橋あと、周りに何もなさすぎて、星が尋常じゃないくらいキレイ。どれが何座かわからないくらい星が光っていました。

みさ行ってみたいです。ちなみにどんな研究をされていたのですか?

高橋ざっくり言うと、海洋酸性化(※)がサンゴにどういう影響を及ぼすかという研究です。

高橋硫黄鳥島は火山島で島周辺の水中に二酸化炭素がぽこぽこ湧き出てるんです。自然界の海だけれど、CO2が増えた未来の環境になっているような特殊な場所です。

※海洋酸性化…二酸化炭素が地上で増えると海水中にも二酸化炭素が溶け込み、海水が酸性に傾く現象

高橋2つ目は久米島ですね。沖縄本島から飛行機で30分、フェリーだと4時間。学生時代は久米島のダイビングショップでアルバイトをしてたこともあってしょっちゅう行っていました。

高橋久米島の海の好きなところは、ダイナミックな群れの景色。チョウチョウウオの群れ、ギンガメアジなどの群れ。これがもうすごい規模で渦巻いていて。
そして、それに劣らずサンゴの隙間に棲むような小さなかわいい生き物たちもたくさんいます。大物から小さな生き物まで楽しめる懐の深い海です。

みさスイミーみたい!

高橋3つ目はパラオです。日本と違ってサンゴ礁の規模が大きい。サンゴの密度も大きさも想像を超えていて、生き生きとしているように見えました。

みさすごい。いろんな種類がいるんですね。海藻みたいに見えるこれもそうですか?

高橋ひらひらしてるけど固いですよ。透明度が高くてどこまでも下が見える。ポイントによっては潮の流れが速くて、そういうところは生き物が目の前をしゅんしゅん通りすぎていきます。
こっちからエイが来て、パッと振り向いたらサメがいて、足元にはウミガメがいて、生き物の密度が濃いなと思いました。

みさす、すごい!近づいて撮ってるんですか?カメラはどんなものを?

高橋けっこう近づかせてくれました。カメラは特別なものじゃなくて普通のコンデジ(コンパクトデジタルカメラ)を使っています。皆さんが持ってるデジカメと違うのは防水ケースに入れて、外部ストロボをつけてるくらいですね。

みさどれも透き通ってますね!

海の生き物

みさ行ってみたい海や、会いたい生き物はいますか?コロナ禍ではなかなか難しいかもしれませんが。

高橋定期的に沖縄に行っていたので、今は沖縄の海に行けないことがすごくストレスです(笑)いつかカリブ海や紅海の海で潜ってみたいです。固有種がいっぱいいると聞くので見てみたい。そこにしかいない種類の魚とかウミウシとかカニとか、そういうのに萌えます。

高橋これは沖縄で見た、クダゴンベという魚。乗っかっているのはソフトコーラルという柔らかいサンゴの仲間です。

高橋この写真はタツノオトシゴの仲間で、ピグミンシーホースと言います。どこにいるかわかりますか?これもサンゴの仲間に巻き付いているんですけど、うまく擬態をしていて。

みさきれいですね…!素敵なお写真ばかりです。

磯部(イソブ)のこと

みさ磯部という活動もされているんですよね?

高橋はい。活動というほどのものではなく、磯に行きたい人や友達を集めてやっているプライベートな遊びに勝手に名前をつけているだけです(笑)。
東京に来てからダイビングに行く頻度は減ったけど、磯に行く機会は増えました。身一つでできるお手軽な遊びです。

みさわー、面白そうです。どのくらいの頻度でやってるんですか?

高橋コロナ前は夏シーズン月1〜2回くらい。去年と今年(取材時2021年)は大々的に人を募ってというのはやっていないので、タイミングがあった人と少人数でちょちょっと磯に出かけてました。

磯部中の高橋さん

みさ今度ぜひ連れてってください!磯部も、海や環境のことを考えてもらうきっかけづくりですよね。

高橋そうですね、海仲間が増えるのは純粋に楽しいので常に隙あらばきっかけづくりをしています(笑)。

魚食のこと

みさ食べるのもお好きということでしたが、好きな魚やお料理は何ですか?

高橋好きな魚は…これも選ぶのが難しいですが(笑)、今年(取材時2021年)はカツオをたくさん食べました。
かつおは日本でMSC漁業認証(※)を取っているものもあって、ここ数年で私にとってぐっと身近になりました。

※MSC認証について詳しくは前編 MSC「海のエコラベル」をご覧ください

MSC・高橋麻美さんに聴く(前編)MSC「海のエコラベル」

高橋これはアンコウのリゾットなんですけど、近くに魚屋さんがあって。アンコウのほほ肉というのが売ってたので興味本位で買ってみました。

みさすごくおいしそうです。魚は自分で捌くんですか?

高橋アンコウは無理ですけど、最近はものによっては自分で捌きます。これはイワシですね。

みさすごい、自分で捌いたりはしないので憧れます。

高橋あとベビーホタテもよく食べました。ホタテは海にプランクトンとして漂っている子どもを採取してまずは1年くらい育てて、そこから本格的な養殖がはじまり2~3年で出荷されるんですけど、その1年目のサイズのホタテはベビーホタテとして売られています。

高橋ケッパーとレモン汁で和えて胡椒を散らすとおいしいですよ。

みさおいしそう!

高橋ホタテは捌く必要がなく、パックから出してすぐ食べられるから便利!

これからのこと

みさ興味があることや、今後やってみたいことはありますか?

高橋仕事の面では、何か特別に新しいことというよりは、今関わらせていただいている方々とじっくりコツコツとプロジェクトを育てていきたいと思っています。

高橋先ほども言ったように、生産者の方がやると決めてすぐ結果がでるものでもないので。まだまだ日本ではMSC漁業認証は拡大の余地があるので、焦らずじっくりやっていきたいです。MSCジャパンの漁業担当は私ともう1人の2人体制なので、やることはたくさんあります。

みさえっ、2人だけ??全体で何人いらっしゃるんですか?

高橋日本のオフィスは8人です。

みさココリコの田中さんがアンバサダーをされていたり、広報にも力を入れてらっしゃってたくさんの仕事がありそうなのにどうやって…すごいです。

高橋広報チームも2人体制でがんばっています。

みさ「サステナブルなものを選ぼう」という流れは私も感じています。

高橋サステナブルやSDGsが一時的なブームで終わらないように、そして”なんとなくそれっぽくやっている”で留まらないように、MSC漁業認証の信頼性を担保しつつ、資源管理やビジネスの観点で有効だということも広く発進していかなくてはと思います。

みさ貴重なお話をありがとうございました!

海の宝!水産女子の元気プロジェクト

水産女子とは?

まだまだ男性社会である漁業・水産業の現場で活躍する女性たちのことで、水産庁の立ち上げる「海の宝!水産女子の元気プロジェクト」にメンバーとして参加し、日々の生活や仕事にまつわる情報を社会に広く発信しています。
活動を通して、女性にとって働きやすい漁業・水産業の現場改革や仕事選びの対象としての漁業・水産業の魅力向上を後押ししています。
https://www.jfa.maff.go.jp/j/kenkyu/suisanjoshi/181213.html