第4回目は、深海合唱団のSALLYが、ウミトロン株式会社・佐藤彰子さんにインタビュー。
前編では、ウミトロンさんの取り組む「持続可能な水産養殖」のことを中心にお話を伺いました。

佐藤彰子

佐藤彰子さん
プロフィール
Akiko Sato

銀行での法人営業、IT企業で採用担当を経験。その後、水産養殖に可能性を感じ、持続可能な水産養殖に取り組むウミトロン株式会社に入社。主に広報・マーケティングや採用を担当する。
https://umitron.com/ja/

SALLY

SALLY

ウミトロンの持続可能な水産養殖

SALLY今日はお時間いただきありがとうございます!早速ですが、佐藤さんが所属するウミトロン株式会社(以下ウミトロン)って、どんな会社ですか?

佐藤さん(以下敬称略)2016年にできたスタートアップ企業です。『持続可能な水産養殖を地球に実装する』というミッションを持っています。シンガポールと日本にオフィスがあり、国際色豊かで多様性あふれる約30名のメンバーが働いています。

養殖場風景(愛媛県愛南町)

養殖場風景(愛媛県愛南町)

SALLY持続可能な水産養殖とは、具体的にどのように実現するのでしょうか?

佐藤ニュースで話題になっている「IoT」や「AI」「衛星データ」などを使っています。生産者の負担を減らし、効率的な養殖をしながら、いかに安定した味のおいしい魚を育てていくかというのを試行錯誤しながらやっています。

SALLYやはり生産者さんの負担というのはけっこうあるんでしょうか?

佐藤生産者さんは、真鯛やぶりなどの魚の生簀(いけす)を数十〜数百個単位で管理しています。餌やりをするにも、まず生簀に20キロぐらいある餌を何袋も船で運んだりしなくてはなりません。

SALLY餌やりだけでも大変なんですね!

佐藤そうなんです。しかもそういった工程があると、魚が本当に食べたいタイミングにちゃんと餌をあげることも難しいです。

ペルーのサーモン養殖事業者が使用するUMITRON CELL

ペルーのサーモン養殖事業者が使用するUMITRON CELL

佐藤そこで「ウミトロンセル」という製品があります。これがあれば、生産者さんは家にいてもどこにいても、スマホで餌やりができます。

SALLYスマホで!?

佐藤機械なので1日に20~30回餌やりをしても疲れません(笑)。生産者さんからは「子どもの面倒を見ながら餌をやれた」とか「子どもの参観日に行けるようになった」という声をいただきました。

UMITRON CELLアプリ画面

UMITRON CELLアプリ画面

SALLYすごいですね!関わる人の生活を変えられる。

佐藤そうなんです。さらに、この技術によって魚の成長を早めることもできるんです!

ウミトロンセル

佐藤真鯛の場合、通常1年ぐらいかかる生育サイズに、実証試験では8ヶ月ぐらいで生育できたなどの結果が出ていて、消費者にも安定したおいしいお魚が提供できる。生産者と消費者、どちらの生活も変えることができる技術なんです。

水産養殖の現場とは

SALLY水産養殖に携わる方はどんな方が多いですか?

佐藤私たちが関わっている事業者さんだと、50代〜60代ぐらいの方が多いですが、20代後半〜30代ぐらいで家業を継いで養殖されている方も意外といらっしゃいます。出荷作業を手伝っているご家族で女性はいましたが、私が知る限り生産者さんで女性は本当に一握りです。

SALLYご家族で経営されていることが多いのでしょうか。

佐藤数百の生簀を所有するような大きな企業もありますが、ほとんどの生産者さんは従業員が数名〜十数名程度で、ご家族やご親族でやっているところも多いです。

SALLYそうであればなおさら、餌やりを子どもの参観日でもできるとか、そういったことは大事ですよね。

佐藤そうですね。生活を楽にすることもそうですが、子どもたちから水産業に携わりたいと思ってもらえるような、かっこいい産業にすることにも技術で貢献できたらと思っています。

生産者さんのこと

SALLY生産者さんって、気候や海のことを肌で理解しているというイメージで、新しい技術を提案することは難しい部分もあるのかなと思ったのですが、実際、生産者さんとのコミュニケーションはどのようにされているのでしょうか。

佐藤現地に行って、生産者さんの声を聴くことが大事だと思っています。生産者さんによって、考え方や育て方、環境など全然違うので、現場に行かないとわからないことがたくさんあります。

UMITRON メンバー養殖現場訪問

佐藤「AI」とか「IoT」などの技術について説明すると「面白い!」「挑戦したい!」と言ってくださる生産者さんもいれば「スマホの使い方がわからない」「事務所にPCがないから…」という方もいらっしゃいます。まずは、課題改善を希望する生産者さんと一緒に取り組んでいますが「あそこが使ってるらしい」とコミュニティの中で広がることもあるので、コミュニティを拡大していくことも意識しています。

 現場では

SALLYどのくらいの頻度で現場へ行くのですか?

佐藤現在の仕事で現地に行くことは少ないのですが、昔担当していた時は、多くて月に1~3回ぐらいの頻度で、一週間かけて複数の現場を回ったりしていました。ぶりや真鯛が育つ暖かい四国や九州、近畿地方の海がほとんどです。

UMITRON メンバー現場訪問風景

SALLY具体的にはどんなことをされるんですか?

佐藤製品の設置や、調査、広報用の動画撮影など、いろいろなことをしました。ぶり300匹のサイズを図ったこともありました。最初のほうは笑顔でやっていましたが、だんだん疲れて最後のほうは筋肉痛になりました(笑)。感染症の状況がおさまったので、現場にもまた行きたいですね。

UMITRON LENS解析画像

UMITRON LENS解析画像

佐藤さんとウミトロン

SALLY佐藤さんはウミトロンにいつ入社されたんですか?

佐藤もうすぐ4年になります。社員8人目で入社したので、この会社では初期メンバーに近いです。

ウミトロン集合写真

SALLYなぜこのお仕事に興味を持ったのですか?

佐藤私は仕事をする上で、全人類に貢献できる領域に携わりたいと思ったんです。衣食住の中で、食を必要としない人はいませんよね。

SALLYそうですね。確かに。

佐藤それで、食に関わるところに携わりたいと思いました。その中でも、水産養殖に可能性を見出したんです。海には、技術導入が進むことで現在の100倍生産できるポテンシャルがあるといわれています。

SALLY100倍ですか!?

佐藤地球規模での人口増加による食糧不足が問題になっていますが、それに貢献できることは、社会的意義があります。

佐藤そして、海を相手にしている会社が少ないので、「手触り感」というか、魚を相手にすることはレア。ワクワクしますし、ビジネスとしても面白いなと思ったんです。

SALLY仕事にワクワクは重要ですよね。

「未来で魚は食べられるか(後編)」へつづきます。
7月13日(水)公開予定です。どうぞお楽しみに!

うみとさち

100年先も、おいしい海へ。おいしさ・安心・サステナブルにこだわったシーフードや「うみとさち」の簡単ごちそうレシピも要チェック!
https://www.umitosachi.umitron.com/

海の宝!水産女子の元気プロジェクト

水産女子とは?

まだまだ男性社会である漁業・水産業の現場で活躍する女性たちのことで、水産庁の立ち上げる「海の宝!水産女子の元気プロジェクト」にメンバーとして参加し、日々の生活や仕事にまつわる情報を社会に広く発信しています。
活動を通して、女性にとって働きやすい漁業・水産業の現場改革や仕事選びの対象としての漁業・水産業の魅力向上を後押ししています。
https://www.jfa.maff.go.jp/j/kenkyu/suisanjoshi/181213.html