第4回目は、深海合唱団のSALLYが、ウミトロン株式会社・佐藤彰子さんにインタビュー。後編では、ウミトロンさんの展開する「うみとさち」のことを中心にお話を伺いました。
前編「未来で魚は食べられるか」はこちら

佐藤彰子

佐藤彰子さん
プロフィール
Akiko Sato

銀行での法人営業、IT企業で採用担当を経験。その後、水産養殖に可能性を感じ、持続可能な水産養殖に取り組むウミトロン株式会社に入社。主に広報・マーケティングや採用を担当する。
https://umitron.com/ja/

SALLY

SALLY

佐藤さんのお仕事

SALLY今、佐藤さんはどんなお仕事をされているんですか?

佐藤人事採用や広報、技術で育てた魚やサステナブルなシーフードを消費者に販売する「うみとさち」のマーケティングなどを担当しています。

UMITRON 店頭にて

佐藤店頭で、遠隔で餌やり体験をしてもらうイベントをしたり、テレビ番組でもリモート餌やりを取り上げてもらったことがありました。

SALLY店頭で餌やり体験ですか!iPadで生簀の様子がリアルタイムで見られるんですね。

佐藤子どもにも大人気で。「養殖ってこんな感じなんだ!」と、興味を持ってもらえたと思います。

リモート給餌・リアルタイム動画イメージ

リモート給餌・リアルタイム動画イメージ

UMITRON 店頭にて

SALLYお魚買って帰りたくなりそうです!広報のお仕事で難しいと感じるのはどんなところでしょうか。

佐藤養殖と技術、サステナビリティ、どれも普段あまり考えたことがない方も多い中で、そこをかみ砕きつつ、いかに自分ゴトとして課題を捉えてもらえるように伝えられるかが難しいです。

SALLY確かに。養殖という言葉は知っているけど、具体的なことはよく知りませんでした。ウミトロンに入社したことで意識が変わったことはありますか?

UMITRON メンバー現場訪問風景

佐藤魚のことだけでなく、サステナブルなものに対して、意識を持つようになりましたね。牛肉も牛のゲップなどから排出されるメタンガスが地球温暖化に及ぼす影響を研究結果で知ってから、すすんでは食べなくなりました。

SALLY私たち深海合唱団も海について歌っていて、活動をするなかで、プラスチックごみについて考えるようになったりしました。この意識の変化って人との出会いが大きいのかなと思っています。

佐藤情報として触れる機会も多くなってきていますよね。あと、消費者動向を企業が感じ取っている部分もあって、消費者一人ひとりの力は小さいですが、その声が社会として反映されることで大きく変わっていくと思っています。

うみとさち

SALLYうみとさち」はいつごろ始めたんですか?

佐藤2020年12月ごろからクラウンドファンディングでスタートし、量販店やオンラインショップで販売しています。

UMITRON 店頭にて

SALLYその時期だとコロナがきっかけですか?

佐藤そうです。特に真鯛は、飲食店やホテル、結婚式などで食べられるのですが、そこが休業してしまったので困っている生産者さんが多かったです。

SALLY飲食店だけにフォーカスされがちですが、そこに魚を提供している生産者さんも困りますよね。

うみとさち

佐藤はい。そこで、私たちなりの売り方で生産者にとってもよい方法は何かを考えて始めました。きっかけはコロナですが、持続可能な水産養殖を実現していくために、消費者にサステナブルなシーフードをこれからも届けていきます。

SALLY技術で生産を改善するだけでなく、届ける仕組みも提供しているんですね。

佐藤そうです。生産しても売れないと意味がないですし、普通に販売してもサステナブルに生産されているかどうかはわからない。

サステナブルな
シーフード

SALLY私は子どもができてから、サステナブルなものや食品の安全性を気にするようになりました。生産者さんのお顔が見えると安心です。

佐藤お子さんを持つママさんからそのような声をよく聞きます。より多くの消費者に「サステナブルなものを選択する」という意識を持ってもらうためにも、「うみとさち」では生産者さんの顔やストーリーを伝えることも大事にしています。

SALLYスーパーのお肉や野菜のコーナーでは生産者さんの顔が出ていたりしますが、鮮魚コーナーではあまり見かけない気がします。消費者が「これはサステナブルなものだ」と分かるラベル表示なども重要になってきますね。

佐藤そうですね。「うみとさち」では、ASCラベル(※)の付いた養殖真鯛なども販売しています。

※ASCラベル…環境と社会への影響を最小限にして育てられた『養殖』の水産物の証。
水産資源と環境に配慮した漁業で獲られた『天然』の水産物の証であるMSCラベルについてはこちら

MSC・高橋麻美さんに聴く(前編)MSC「海のエコラベル」

未来のお寿司屋さんと養殖

佐藤ここ40年で海の資源量が半分ぐらいになっていて、漁獲枠に余裕があるのはわずか10%未満というデータもあります。もしかすると、将来子どもがお寿司屋さんで食べられるネタは、たまごとサーモンぐらいしかない、なんてことが起こってしまうかもしれません。

SALLYたまごとサーモンだけ!?今の養殖の技術を使っても、そうなってしまうんですか?

佐藤実は、養殖と言っても、餌や稚魚に天然のお魚を使っていることがあります。天然由来の餌を減らしたり、完全養殖にしていく必要があり、養殖自体も完全にサステナブルなものではないんです。

SALLYまだ進化する必要があるんですね。佐藤さんが思う養殖のいいところってどんなところですか?

佐藤大きく2つあります。1つ目は作り手=生産者がいること。みなさん、色々な想いや哲学で育てているのでそれが面白いと思います。例えば、餌に柑橘類を使って、さっぱりした味の魚を生産しているところもあります。いろんな工夫をして育てながらも、実は最適な魚の育て方についてはまだまだ探求できる余地が多かったりと、生き物を育てる上での面白さと難しさがあるところです。

生け簀内の真鯛

生け簀内の真鯛

佐藤2つ目は、年間を通じて安定しておいしいということ。天然には旬がありますが、養殖はどの季節に食べても安定した味を再現できます。

SALLY今回、お話を聞いてみて、養殖がぐっと身近なことなんだと感じました。

これから

SALLY最後に、佐藤さんの将来の展望をお聞かせください!

佐藤自分のやりたいことに対して、価値やスキルを発揮できるようにしていきたいと思っています。やりたいことを続けていけば、ご縁やキャリアがつながっていくんだろうなと。今は、会社がやっていることが私のやりたいこととつながっているので、会社がやろうとしていることをいかに実現していくかを考えています。

2019年8月に開催されたジャパン・インターナショナルシーフードショーの展示会場にて

2019年8月に開催されたジャパン・インターナショナルシーフードショーの展示会場にて

SALLYそんな会社に出会えたのは素敵ですね。自分自身に軸がないと見つけられないと思います。「今やりたいことをやっていく」というマインドを持つ秘訣はなんでしょうか?

佐藤難しい質問ですね。どうなんだろう…。昔からそういう性格です。小さい時からやりたいことをやらせてもらってきて、やりきった後に次のやりたいことや目標がないと不安になってしまう性格でもあるので、常にアンテナを無意識的に張っていて、次にやりたいことを考えている気がします。

SALLYワクワクやキラキラを失ってしまうことを不安に思ってしまうんですかね。

佐藤なるほど、そうかもしれないですね!

SALLY就活とか、「これで人生が決まってしまう」と思ったときに不安になったりしますよね。そんな時、自分の心と対話して「自分のやりたいことをやっていく」と決めてやっていくことって大事ですよね。

佐藤そういった決断ができる人は、決めたことを続けていくこともできると思います。

SALLYすごく勉強になりました。めちゃくちゃ楽しかったです。ありがとうございました!

うみとさち

うみとさち

100年先も、おいしい海へ。おいしさ・安心・サステナブルにこだわったシーフードや「うみとさち」の簡単ごちそうレシピも要チェック!
https://www.umitosachi.umitron.com/

海の宝!水産女子の元気プロジェクト

水産女子とは?

まだまだ男性社会である漁業・水産業の現場で活躍する女性たちのことで、水産庁の立ち上げる「海の宝!水産女子の元気プロジェクト」にメンバーとして参加し、日々の生活や仕事にまつわる情報を社会に広く発信しています。
活動を通して、女性にとって働きやすい漁業・水産業の現場改革や仕事選びの対象としての漁業・水産業の魅力向上を後押ししています。
https://www.jfa.maff.go.jp/j/kenkyu/suisanjoshi/181213.html