尊敬する人は誰?と聞かれたら、
真っ先に「母」と答えるだろう。
15年前、父親が天国へと旅立ってしまった後、
一家の大黒柱として一所懸命働いてくれた母親。
正直、どんどん男のようになっていく母があまり好きではなくて、
素直になれずに反発してしまっていたことを、今もずっと後悔している。
そんな母も3年前、突然、父の元へと旅立ってしまった。
一生懸命になりすぎて、身体が限界に達してしまったらしい。
同じ世界から居なくなってから気がついたのは、
母はびっくりするくらい強くて、繊細で、少女のような人だったということ。
本当はとても可愛らしい人が、
男みたいにたくましくなってしまった背景には、
家族を大切に想ってくれた母の「強さ」と「覚悟」があったのだろう。
私も母のように、強い女性になれるだろうか。
そういえば生前、母は呪文のように「音楽は続けていてほしい」と呟いていた。
だからという訳ではないけれど、今も音楽は生活の一部と化している。
私にとっての音楽は、自分を表現したり、誰かと繋がることの出来るツール。
幾度か離れようと試みたこともあったけれど、
結局好きで戻ってきてしまう、いわばホームグラウンドのようなもの。
音楽を続けることで、天国にいる母が喜んでくれていたら嬉しい。
夜中にふたりでアイスを食べるのがお楽しみだった。
今でもたまに、暗い部屋でひとりアイスを食べながら、
母のことを想い浮かべている。
偉大な母の背中にはまだまだ追いつけないけれど、
大切な人たちの支えになれるくらいには
少しずつ、強くなりたいなと思う。
写真 / 松永奈々