私にとって1番身近なアクセサリーは結婚指輪だ。銀色の、シンプルな指輪。
出産の時に外した以外は24時間ずっとつけている。

日常的にアクセサリーをつけることがあまりなかった私は、それまでと同じようにしていても、物を持つと、指輪が当たってカチッと鳴った。

その音がするたびに、指輪してる!指輪がある!と確認できるようでうれしかった。
だからテーブルになんとなく当ててリズムを叩いてみたり、グラスを持つと当たって鳴るのをうれしがっていた。

ある日、流れている音楽に合わせてリズムをとっていた。
すると近くにいた夫が「指輪がぶつかっているよ」と注意する訳でもなく言った。

『ぶつけている』なんて考えていなかったし、むしろその音を楽しんでいたけれど、そう言われた事で、夫の思う「大切にする」から外れた行動だったのかもしれないとハッとした。

そして、夫は指輪に物が当たるような事をする時には外して傷がつかないようにしたり、たまに磨いたりしている事を思い出した。

私は指輪を大事に思っていなかったわけじゃない。
楽しんだ事で付いた傷は、楽しかった証拠のように思う事もある。

だけど、私にこの指輪を贈ってくれたのは夫だ。
だから夫の思う「大切にしている感覚」に合わせたいと思い、音を出すように物に当てることはやめたのだった。

物を買ったり、もらったりしたら、どんな風に使うか、どんな風に扱うかは人それぞれだ。
人からはそう見えなくても愛着があったり、気に入っている物もある。

自分の物をどう持つかは自由なのだけど、作った人や贈ってくれた人ががっかりするような使い方はしたくない。 気持ちを想像して、それに沿った方法で物を大切にしたり使っていくのは、相手を大切にすることだなと実感した。

もう指輪で音は鳴らさないけど、
たまに触っては指輪がある!と喜んでいる。

カエルデザイン

カエルデザインは、様々な障がいを持つ人たちとともに、廃棄され海岸に漂着した海洋プラスチックやフラワーロス(廃棄花)などを回収し、アクセサリーなどに加工する、アップサイクルブランドです。
https://kaerudesign.net/

写真 / 松永奈々