第1回目は、深海合唱団の野呂圭都が、株式会社大成・田中淳子さんにインタビュー。
前編では、田中さんがオススメする「昆布」のことを中心にお話を伺いました。

田中淳子

田中淳子さん
プロフィール
Junko Tanaka

前浜原料の輸出、加工業、販売業を行う株式会社大成に所属。
昆布を原料に使ったせっけんを開発し普及に努めている。
https://daisei66.co.jp/

野呂圭都
Kate Noro

田中さんのこと

圭都今日は楽しみにしてきました!まずは田中さんについて伺わせてください。ズバリ、田中さんの性格をひとことで表すとしたら?

田中さん(以下敬称略)せっかち!生き急いでいるというか、コロナを機に一日一日もったいないと思って、スケジュールをいっぱい入れちゃう。

圭都わーっ!(笑)

田中スケジュールをいっぱい入れることで、「海の宝!水産女子の元気プロジェクト」(以下水産女子)メンバーをはじめいろんな人と会うようになって、視野がすごく広がった。50才過ぎてもまだまだ知らないことがあるんだって、今も挑戦中で楽しいです。

圭都すごい!私はのんびりした性格なので尊敬します。

田中肌に悪いと思いつつ、寝る時間がもったいないって思っちゃう(笑)。

圭都お勤め先の株式会社大成さんではどんなお仕事をされていますか?

田中メインは総務です。庶務、雑務全般に加えて、会社の規模の関係でEC(※)と海外事業を兼務しています。

圭都大成さんはSNSも充実していますが、田中さんが担当されているのですか?

田中SNSは主に広報の役割で、私は「SNSに上げて!」って言って文章書いてもらってる(笑)。こんぶせっけんもEC事業の中に今は組み込まれています。でもせっけんは実質自分が言い出しっぺだから、自分がやらなきゃいけない(笑)。

※EC…オンラインショッピングサイト等インターネット上で契約や決済を行い、物やサービスを提供する事業の総称。

こんぶせっけんのこと

圭都そう、こんぶせっけん開発のきっかけが気になっていました!

田中水産女子の中に、「ぶんこのこんぶ」(※)を使ってクッキーを試作しているメンバーがいて、おもしろいと思いました。昆布って「体にいい」って感じがするじゃないですか。

※ぶんこのこんぶ…海洋保全に取り組む一般社団法人・里海イニシアティブが育てている、横浜の海で養殖・収穫されている昆布。

田中そのご縁で、横浜の金沢八景に昆布の収穫体験に行って。漁師さんが獲ってきた昆布を、私達が10kgずつ段ボールに小分けして冷凍庫に運ぶ。それが2月後半でめっちゃ寒いんですよ。でもその時に浦和から金沢八景に来てくれたからって昆布のしゃぶしゃぶを出してくれて、それがものっすごくおいしかったんです!

圭都新鮮な昆布のしゃぶしゃぶ…!おいしそう!

田中その時、大成は水産会社なので昆布保管の相談を受けて。冷凍庫の保管代ってすごくかかるんですよ、最初8トンって言われて。

圭都8トン!

田中大成の東京にある倉庫は賃貸だし、営業にも相談したけど難しくて。でも何か協力できないかと思って、会社の屋上でこんぶを勝手に干してみた(笑)。

圭都ええっ(笑)!?

田中すると、乾燥させると「ぶんこのこんぶ」って薄くてやわらかいんですよ。ぱりぱりって粉にできちゃうんですね。乾燥して保管したら、軽いし小さくなるし保管料もかからない。何かできないかなと思った時に、昆布ってぬるぬるするからせっけん作ってみよっかなって。

圭都おお~。

田中自分でグリセリン買って、会社の事務所で混ぜて。すると深いグリーンでいいものができたんです。

圭都こんぶせっけん誕生の瞬間ですね。

田中そこで会社に提案したけど、新しい事業だから資金もないしニーズがあるかわからない。それで、クラウドファンディングにチャレンジすることになって。だめならしょうがないから、自腹で作ろうって思ったんですよ。「ぶんこのこんぶ」の活動にも協力したいし、自分でもせっけんがいい出来だと思ったんです。

こんぶ石鹸

田中その後見事クラウドファンディングを達成し、会社からOKが出ました。今度は売るものなので手作りではなく、せっけん工場を探してお願いして。お金がないからデザインなども頼み込んで格安でお願いして。

圭都自分たちで全部手配されたのですね。

田中本当は将来的にはこのプラスチック包装をやめたいと思っています。とはいえパラフィン紙だとまだ課題があって。先日対面販売では、「自宅用だからパッケージはいらないよ」って仰る方が多くて、パッケージ代を値引きしたものがどんどん売れました。

圭都今後より広まって、さらに納得できるような包装にできるといいですよね。私も購入しましたが、きれいな緑色で、匂いが想像よりずっとナチュラルです。

田中実はコロナ禍で福岡の製造工場に行けていないんですが、クラファン当初より昆布を20%くらい増量しています。本当はもっと深い緑にしたいけど、配合上それ以上は難しくて。(当初より)少し色も濃くなっています。

田中昆布の色は大事にしたくて、クロロフィル配合は断りました。昆布粉末がパッケージの下に溜まるのが最初気になったけど、「この方が本当に入ってる感じがする」って皆さんのお声が。

圭都わかります!このムラというか、グラデーションが好みです。天然のもので作っているんだなという印象を持つし、ひとつひとつ表情が違うのが良いです。

田中中に入る成分も、動物性ではなく植物性を選びました。ヴィーガンの方などにも使っていただきたいなって。

圭都私もコロナ禍を機に、身の回りのものをより身近に感じるようになって、食品添加物や化粧品の成分などについて考えたり選択することが増えました。このせっけんは合成の界面活性剤や防腐剤は使用していないんですか?

田中はい、使っていません。口に入れても大丈夫なもので作ってもらっています。絶対譲りたくないポイントで、水産女子としてのレベルを下げたくないなっていう想いです。でもいちばんの理由は、昆布せっけんを作ることじゃなくて、使っていただくことで横浜の昆布について知ってもらいたいからです。昆布は二酸化炭素を吸って酸素を出すことで海がきれいになる。

圭都海がきれいになる!昆布ってすごいんですね。

田中そうなんです。そして、収穫することで漁師さんの収入源にもなるんですね。収穫したものを食べてほしいけど余ってしまって。それならせっけんというものを通して横浜の昆布を知って、環境にゆるい感じで関わってもらえたらいいなって思ったんですね。

圭都横浜の八景島って水族館のイメージが強くて、昆布が生産されていると知って驚きました。

田中その昆布がまた柔らかくておいしいんですよ!昆布水(※)がおすすめ!水溶性繊維質だから便通よくなるしお肌にもおすすめ。昆布巻きとかめんどくさいじゃない(笑)。

※昆布水…昆布を水に漬けて数時間置くだけ。お味噌汁や煮物、炊飯や炊き込みご飯などに使えます。健康のためにそのまま飲む方も。

圭都生産・消費することで人にも環境にもメリットがあるんですね。食べるだけでなく生活用品としての活用方法も、これからもっと浸透していったらいいなと思いました。生活用品といえば、せっけんと一緒に購入した昆布の入浴剤がとても良かったです!

田中おすすめ!「ぶんこのこんぶを使ったシルク入浴パック」です。一見高いように見えるけど、100%天然昆布の入浴剤だから絶対いいと思う!

圭都天然の美容グッズ大好きなのですが、昆布をそのまま入浴剤にするという発想がすごいと思いました!シルクの袋の中に乾燥昆布が入っていて、お風呂に浸すとどんどん増えるんですよね。お湯の中で昆布がとろっとしてきて、シルクのなめらかな手触りも相まって…ずっと触っていられます。

田中パンパンになりますよね(笑)元々オーガンジーの袋に入れてたんですけど、以前個人的に香港で購入したシルクがよくて。自分が気に入ったものを売りたいじゃないですか。

圭都お湯もやわらかくなるし、ほのかな磯の香りが心地よくて…私もとっても気に入りました!もっとたくさん買って色んな人に配りたいくらいです。

こんぶ湯のこと

圭都銭湯のこんぶ湯企画(※)について聞かせてください。

※こんぶ湯…海洋療法「タラソテラピー」をヒントに里海イニシアティブで生まれた、昆布を銭湯のお湯に入れて美容や癒しの効果を体験し、消費してもらうための企画。

田中10/10に神奈川全域の銭湯でこんぶ湯をやりました。やっぱり女性はその入浴剤に目が行くんです。銭湯組合の事務局長さんが女性で。その方がシルクを各銭湯にひとつずつ置きたいって買ってくださったんですよ。 男性は興味ないし、せっけん作る際も説得するのが大変でした(笑)。

圭都自然派コスメは男性でも使いやすそうですよね。

田中そうなんです!化粧水をつけない男性でもしっとりするから、ぜひ男性にも使ってほしいです。

こんぶと環境のこと

圭都先程仰っていましたが、昆布が環境にいい影響があることにびっくりしました。

田中昆布って、養殖していて、下から生えるんじゃなくて紐に種付けして上からカーテンのように育つんです。そして光合成して、杉の木の約5倍二酸化炭素を吸収すると言われているんです。

圭都杉の木の5倍ってすごいですね。

田中二酸化炭素を出さないような活動をする企業や、ブルーカーボン(※)に注目する企業が徐々に増えてきています。

※ブルーカーボン…海藻などの海洋生物系に吸収される炭素(カーボン)のこと。人間の活動で排出された二酸化炭素を吸収している。

田中横浜の昆布を現地で消費することで、輸送費がかからなかったり、排気ガスが出ないというメリットもあるんですよね。最近はブルーカーボンが注目されるようになって、こんぶせっけんがメディアに取材していただけるようになりました。使い終わった昆布を、肥料などに再利用する仕組みを考えている銭湯さんもあります。

圭都昆布のよさが広まってきているんですね。私もお話を伺ってより興味が湧いてきました!

後編「魚食のすすめ」へつづきます。
1月19日(水)公開予定です。どうぞお楽しみに!

こんぶせっけん

気になった方はぜひこちらをチェックしてみてください。シルク入浴パックも要チェック!
https://komb2021.thebase.in/

海の宝!水産女子の元気プロジェクト

水産女子とは?

まだまだ男性社会である漁業・水産業の現場で活躍する女性たちのことで、水産庁の立ち上げる「海の宝!水産女子の元気プロジェクト」にメンバーとして参加し、日々の生活や仕事にまつわる情報を社会に広く発信しています。
活動を通して、女性にとって働きやすい漁業・水産業の現場改革や仕事選びの対象としての漁業・水産業の魅力向上を後押ししています。
https://www.jfa.maff.go.jp/j/kenkyu/suisanjoshi/181213.html